「日本人」の定義とは?〜妊娠欠場の大坂なおみ、「私は日本人」のグウェン・ステファニー

文=堂本かおる
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大坂なおみ選手 写真:アフロ

 米国の人気ミュージシャンのグウェン・ステファニーと、日本のプロテニス選手の大坂なおみがほぼ時を同じくしてバッシングとそれに対するファンからの支援を受けた。2人の言動は全く異なる理由から出たものだったが、双方への日本からの反応の背後には日本人による日本人観が大きく関わっているように見える。

 1月11日発刊の米国の雑誌アルーアに掲載されたインタビュー記事において、白人のグウェンが「私は日本人(アイム・ジャパニーズ)」と発言。11日に大坂選手は自身のSNSで妊娠と、それに伴う今年の全豪オープン欠場を伝えた。どちらの件についても日米双方で賛否の意見が出たが、米国では特にアジア系から「グウェンの発言は文化の盗用」との声が出た。それに対して日本では「何がいけないのかわからない」が多勢を占めた。大坂選手については日本でも「おめでとう!」のコメントが多くみられたが、試合の欠場について「すっぽかし」「ブッチ」といった批判が出た。

日系人・在米邦人・日本に暮らす日本人

 2人の言動への賛否が分かれた理由は、同じジャパニーズであっても日系人や在米邦人と、日本に暮らす日本人の人種/民族アイデンティティが大きく異なることだ。なお、グウェンの「私は日本人」発言については下記の記事に詳しく書いた。

米白人歌手の「私は日本人」発言、アジア系アメリカ人記者が抱いた“嫌悪感”の正体(文春オンライン)

 アメリカは多人種社会であり、白人が支配してきた国だ。白人以外は今も人種が理由で殺されることすらある国であり、先進国としては人種の在り方が異常だと言える。昔から今に至るまで不条理な支配に耐えかねた黒人、アジア系、ネイティブ・アメリカン、ヒスパニックなどが自らの権利と立場の向上を訴える運動をそれぞれに起こしてきた歴史もある。BlackLivesMatterはその最も新しい例だ。

 この歴史背景があるからこそ、マイノリティはマジョリティにステレオタイプを再現され(グウェンの場合は音楽とファッションによって)、かつそれを販売することによって利益を得られることを経済搾取とも捉える。

 他方、日本に暮らす日本人の大多数は近年まで自身の人種/民族アイデンティティを考えずにいられる環境にあった 。「国籍日本、両親が共に日本人、日本で生まれ育ち、日本語のみを話す」日本人が圧倒的多数を占めていたからだ。

 日本には「欧米人=白人」の刷り込みも戦後以来、いまだに強く残っている。徐々に変化の兆しはあるものの、白人への憧れや、畏怖は言い過ぎにしても白人に対して「腰が引けている」感が見て取れる。その白人が日本のハラジュク・カルチャーを「大好き」と公言して全世界に向けて取り上げてくれたのに何の不満があろうか、逆にグウェンを文化の盗用とそしる理由がわからない、との声が出た。

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