『ラヴィット!』「センス」を実感させたダウ90000のネタ ぼちぼちテレビ日記

文=西森路代
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1月10日

 『ラヴィット!』(TBS)は、「センスの日」ということで、アルコ&ピースの紹介によりダウ90000がおすすめされていた。

 この日に披露されたネタ「間違い探し」では、シェアハウスでひとりが雑誌の懸賞の間違い探しをやっていると、次々に入居者がやってきて参加する。やがて、最初に間違い探しを始めた当人が彼女と別れたことへの「間違い探し」に変化していく…。

 恋愛の間違い探しは、つきあっていた男女の「なぜそんなコミュニケーションしかできなかったのか」の話になる。そのやりとりはまるで坂元裕二のドラマみたいだった。8人のやりとりが徐々にオチに向かう流れがうますぎて関心していたら、この一本だけでなく、二本目も披露された。スタジオ内からも「すごい」「きれい」という声もあがっていた。

 二本目は、「本人役で立っててもらえれば、こっちで勝手にやるんで」ということで、番組MCの川島さんとゲストのアルコ&ピースも参加する総勢11名のコント。川島、平子、酒井の三人はなにがあるかは何も知らない状態で始まった。

 ダウ90000のメンバーが街中で芸人を見た一般人を演じるネタで、ダウ90000の7人は、テレビもラジオもあまりみていない「普通の若者」で、いいかげんなことばかり遠巻きに言っている。

 しかし、残りの一人が異様に詳しい「お笑いファン」で、川島やアルピーの過去の誰も覚えていないような出演番組のことなどを説明しはじめる。やがて、お笑いファンではない一般人役のメンバーが、川島やアルピーに素人ならではの無茶ぶりをして巻き込み、わざと滑らせて変な空気を作っていき、立たされている芸人がダメージをくらってしまうという構造が笑いになっていて、「まじでこれがセンスか!」と思わされるものだった。

 センスのあるネタというのは、いつの時代も、ちょっと懐疑的に見られやすい。なぜかというと、センスなんてものはジャッジがしにくいものだから、誰かが「この人たちにはセンスがある」と言ったところで、「ほんとかよ?」と思う人が増えるだけだからだ。しかもセンスがあるネタは、万人を笑わせるものではなく、しゃらくさい一部の人が、本当は面白くないものを「これを面白いと言えば、センスがあると思われる」から褒めているのだとも思われがちだ。

 たぶん、そういう声は本人たちにも届いていることかと思う。でも、ダウ90000のネタは、「テレビは見ないという若者」とセンスのあるネタを好きな側の「お笑いファン」を演じることで、そういう揶揄を超えるものになってた。

 「お笑いファン」というのは、「勝手に批評をしたり人の知らないマニアックな知識をひけらかすウザい」人だととらえられがちだと思うけれど、その両者をコントの中でやって大いに笑わせた上で、芸人たちの感嘆と笑いをかっさらっていて、本当にセンスの塊だと感心してしまった。

1月24日

 1月からスタートした、フジテレビ系の昼の帯番組『ぽかぽか』。まだ探り探りなところはあるが、トークゲストは毎回豪華で、この日は爆笑問題のふたりが登場。

 いつものように、太田光がふざけてばかりなのだが、ハライチのふたりも、遠慮なく突っ込んでいた。かつて「VOCE」(講談社)でインタビューしたとき、岩井さんは「俺は爆笑問題さんにずっと憧れてます」と語っていた。普段からその気持ちがあるからこそ、強めに突っ込んでも成立するのだろう。

 太田光に対しては、個人的には特にすべてを肯定してるというわけではないけれど、この日の『ぽかぽか』を見ていると、大御所と言われる年代になって、ここまで後輩につっこんでもらえる芸人はいないよなと思った。

 彼らがデビューした頃から見ている身としては、太田光は斜に構えたナイーブな屁の字口のセンス青年にも見えていたわけで(そこがハライチの岩井とも重なるところもあるくらいの!)、今のような「ふざけすぎて後輩にたしなめられる大人」になる未来なんて想像もしていなかったのだ。

 だから、太田光が斜に構えたナイーブさをまとったまま年とったようなおじさんになるよりは、どこまでもふざけていて、後輩に突っ込まれて、ときにシュンとなるようなおじさんになった現在のほうが、いいなと思ってしまった。斜に構えたナイーブなおじさんなんて、突っ込めないし、扱いづらいことこの上ない。

 しかし、書いていて思ったが、太田光がかつては「斜に構えたナイーブな屁の字口のセンス青年」であったと言ったところで、その頃を知らない人には、どこまで信じてもらえるのだろう……。

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