壮絶な人生を描く『溶ける』からギャンブル依存について考える

文=サイゾーパブリシティ
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 106億1000万円をギャンブルで溶かした男、井川意高。彼は大王製紙社長の長男として生まれ、幼少時代は1200坪の豪邸で過ごし、東大法学部に現役で進む。27歳で赤字子会社を立て直し、42歳で本社社長就任と順調に経営していると思われていた井川だが、なんと会社の資金をギャンブルに注ぎ込んで4年の実刑判決を受ける。

 一般人からは考えもつかないような、実業家・ギャンブルのハイローラーとしての壮絶な人生を描いた一冊。ここからギャンブル依存症と共に考えていきたいと思います。

※ハイローラーとは、カジノで大金を使う人のこと。一般的にハイローラークラスの人は、カジノから飛行機やホテルが手配され、VIP対応を受けます。海外ではオンラインカジノのハイローラーも存在し、車などの豪華商品を受け取ることなどもあります。

本の内容

 大手会社社長の長男として生まれた井川は、いわゆる高学歴・超大金持ちのエリートととして順調に生活していました。大学も現役で東京法学部に合格し、なんと42歳という若さで祖父の代からの会社「大王製紙」の社長に就任。ここまで井川は、欠点のないパーフェクトな人生を送っています。

 ギャンブルの世界に入るきっかけはオーストラリアのゴールドコーストのカジノ。ここで2択で勝ち負けが決まる「バカラ」と出会ってしまいます。カジノの王様と言われるバカラは、シンプルでスピーディーで勝った時に一気に大きな金額を受け取れることからハマる人が多いゲームの1つ。ここで井川はビギナーズラックを経験し、軍資金の100万円がなんと2000万円になったのです。このビギナーズラックでカジノで勝つという快楽を経験してしまいます。

 次に井川は家族旅行でラスベガスに行き、またバカラをプレイします。今回は前回より少ない70万円で挑んだにも関わらず、なんと4000万円まで資金が増えたのです。そこでやめとけばよかったのですが、なんとその4000万円全て負けてしまうということも、このラスベガスで経験します。カジノでは2通りの快楽があると言われていますが、1つは勝つ快楽、二つ目は負ける快楽です。この大きな金額を失うことで、「またプレイして負けた金額を取り戻したい」と思うようになってしまったのです。

 そこから井川はかなり依存した状態になり、常にもうバカラをプレイしたい、と思うようになります。今までは家族旅行として1年に1回しか行けず、仕事もあったため頻繁に通うことはできませんでした。しかし、そんなタイミングで井川は大王製紙の社長に就任するのです。

 社長に就任したことにより、自分のスケジュールは自分で組むことができ、なんと毎週マカオのカジノへ訪れるようになりました。

 そこでカジノにどっぷり浸かり、なんと106億円もの負けを作ってしまい、子会社の資金に手を出します。完璧な社長として今までやってきたので、最初は誰も気づきませんでした。しかし内部でのリークにより不正がバレてしまい、警察の捜査が入ります。そして4年間の実刑が下ります。

いかにギャンブルに依存していくかが分かる

 井川さんは一般人とは天と地の差がある境地で生活されていた方で、ギャンブルの額は違えどどのようにしてギャンブルに染まっていくのかが良く描かれていました。カジノの世界で一度でも快感を覚えれば、もうその世界からは抜けることができなく、カジノのシステムの作り自体に良くできていると関心せざるを得ませんでした。

 いくつもの快楽のステージが分かれており、そのトリガーを1つ1つ引いていく様には思わず「その辺でもうやめておいたら、、、」と言いたくなってしまいました。

 本人はどうしてここまでカジノにハマってしまったのかは分からないと述べています。しかし井川さんご本人がYoutube番組で述べていた話で、経営者になると全てが理屈で考えなければいけないため、経営者の中には理屈ではない完全運で決まるバカラにハマったり、中には占いや風水にハマる人もいるのだとか。常に会社で重要な決断を行わなければいけないというプレッシャーも、何かギャンブルにハマってしまう一つの要因なのかもしれない。

 この本の最後では、日本での統合型リゾート(IR)の誘致に関して井川さんがコメントしています。カジノはもうやらない、と反省したそうですが、このIR反対派の方に関しては冷静に批判をしています。こんなにギャンブルによって痛い目に遭ってもいまだにカジノが好きなのです。やはり一度沼にハマってしまうと、その快感が抜けないのでしょう。

 本を読んでいると井川さんの優秀さも伝わってくるので、そんな優秀な人でも抜け出せなくなってしまうカジノの依存性は恐ろしいものだと再確認させられました。

 この本は井川さんのカジノでの話だけでなく、経営者としての体験談やこれまでの生い立ちなど、ビジネスに関する内容が前半に詰まっています。また、後半ではカジノ以外にも芸能人、財界人とのつきあいの模様も描かれており、かなり様々な内容が楽しむことができます。

ノンフィクションとは思えない、一気読みできてしまう作品です。

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