「生活が男性から女性になる」「生活が女性から男性になる」という経験をした五月あかりさんと、周司あきらさん。『埋没した世界――トランスジェンダーふたりの往復書簡』(明石書店)は、性別移行の体験や、「女性であること」「 男性であること」について、ふたりが驚くべき解像度の高さで語り合った一冊です。
「体は男(女)で心は女(男)」「心の性に体の性を合わせるために治療をする」 といった規範化されたトランスジェンダーの物語とは異なる道のりを歩んできたふたりの対話は、徐々に広がり、深まっていきます。
そこでは、すべての人が持つとされている性同一性(ジェンダーアイデンティティ)をはじめ、自明とされている概念が次々に問い直されていきます。本書はトランスジェンダーの語りのバリエーションを豊かにするだけではなく、世の中の大多数を占めるシスジェンダーの人にも「 性別」とは何なのかをあらためて考えるよう促すのです。
さらに、「好き」という言葉や性的指向について対話を重ねるうちに、二人の関係性が変化していくのも本書の読みどころのひとつです。
今回のイベントでは、クィア・フェミニズム批評の見地から文芸評論を執筆する文筆家の水上文さんと、トランスジェンダーに関する寄稿も多い言語哲学者の三木那由他さんに、本書を通して考えたことをお話しいただきました。
シスジェンダー/トランスジェンダーにとって性同一性とは何か。女性であるという経験とはどういうものなのか。性的指向、セクシュアリティとジェンダーアイデンティティとはどのような関係にあるのか。
『埋没した世界』を読んだ人も、これから読む人も、三木さん、水上さんとともに考えてみませんか。
※ 五月あかり、周司あきら著『埋没した世界 トランスジェンダーふたりの往復書簡』(明石書店)も冊数限定で販売中です。

三木那由他
大阪大学大学院人文学研究科講師。専門は分析哲学、 特に言語やコミュニケーションに関する哲学。著書に『話し手の意味の心理性と公共性』(勁草書房、2019年)、『グライス 理性の哲学』(勁草書房)、『言葉の展望台』(講談社)、『会話を哲学する』(光文社新書)、 共訳書に『プラグマティズムはどこから来て、どこへ行くのか』( ロバート・ブランダム著、加藤隆文、朱喜哲、田中凌との共訳、 2020年)がある。現在『群像』(講談社)にて「言葉の展望台」を連載中。

水上文
1992年生まれ。文筆家。文芸批評・書評を書くほか、映画やドラマ、アニメのレビュー、オタク文化やジェンダー / セクシュアリティに関連したエッセイ等も執筆。2022年『文學界』で新人小説月評を担当。2022年1月より『文藝』で文芸季評を連載中。
三木那由他×水上文「ジェンダーアイデンティティを捉え直す 『埋没した世界――トランスジェンダーふたりの往復書簡』刊行記念」
開催日:2023年7月6日(木)
時間:19:00~20:30
商品:アーカイブ視聴(7月27日まで視聴可能)
視聴方法:PC、スマホ、タブレットなどのブラウザから視聴できます。