中高時代、歴史の授業が苦手だったという人は多いはず。教科書を開いて目に入るのは、年号と出来事の羅列でしかなく、“人が生きていた”実感を得にくいのが、原因のひとつではないだろうか。
今春、明治から昭和の時代を生きた、ふたりの女性の“物語”が書籍となって発売された。
日本の皇族に生まれ、国の政策により15歳で朝鮮王族との結婚を決められた、李方子(り・まさこ/イ・バンジャ)。作家・深沢潮さんの小説『李(すもも)の花は散っても』(朝日新聞出版)では、彼女とその夫、韓国のラストエンペラーともいわれる李垠(り・ぎん/イ・ウン)のほか、架空の人物たちの人生がときに並行し、ときに交差しながら進んでいく。動乱の時代に翻弄されながらも、彼女たちが守ろうとしたものとは?
ノンフィクション作家・田中ひかるさんの『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中央公論新社 )では、いまでいう看護師という職業が明治期以前は「賤業」とされていたことにまず驚きがある。それが現在のように、高度な専門性をもつ職業として確立された歴史は、生涯をかけて「看護婦」の制度化と技能の向上に努めた大関和(おおぜき・ちか)の存在なくしては語れない。
李方子と大関和ーー歴史の教科書には出てこないけど、その時代を懸命に生き、いまを生きる私たちに多くのものを投げかけてくれるふたりの女性。深沢さんと田中さんは、なぜそれぞれの人物を描こうと思ったのか、そこから何が見えてきたのか。
そんなテーマで、
・なぜ李方子や大関和の生涯を描こうと思ったのか
・李方子や大関和をとおして知った、歴史の側面
・女性としてシンパシーを感じる、ふたりのエピソード
・彼女らから現代の私たちが、受け取れるメッセージ
・2023年のいまにも持ち越されている問題とは?
・女性を中心として歴史を見直すことで、気付かされたことは?
……など、語り尽くします! ぜひご視聴ください。(企画・文/三浦ゆえ)
作品紹介
大関和とは?
妾の存在に苦しめられた大関和は、子どもを連れて離縁する。 女中をしながら英語を身につけ、 やがてできたばかりの看護学校へ入学、「トレインド・ナース( 訓練を受けた看護婦)」となる。 一心に働く姿は患者からは慕われたが、医師からは疎まれた。 看護学校の仲間たちや、同じくシングルマザーの鈴木雅と、 ときに意見をたたかわせ、ときに手を差し伸べ合いながら、「 看護婦」をひとつの職業として確立させていく姿は、 シスターフッドにあふれている。
李方子とは?
政略結婚を強いられた皇族女性。と聞くと「悲劇の」という言葉が浮かぶかもしれない。たしかに、宗主国と植民地という関係にありながらもお互いに想い合う夫妻を待っているのは関東大震災や度重なる戦争、家族の死。それでもなんとか自分の足で立ち動乱の日本を生き抜いた方子は、戦後はじめて夫とともに韓国で生活をする。彼女の視線をとおして、戦前〜戦後の日韓の歴史、そこで生きた人々がビビッドに描かれる。

深沢潮
小説家。2013年新潮社より、連作短編集「ハンサラン愛するひとびと」を刊行。(文庫で「縁を結うひと」に改題)。ほかの作品に、「ランチに行きましょう」(徳間文庫)、「乳房のくにで」(双葉文庫)「翡翠色の海へうたう」「わたしのアグアをさがして」(ともにKADOKAWA)などがある。最新作は4月に刊行した大河長編「李の花は散っても」(朝日新聞出版)。写真/上田泰世(朝日新聞出版写真映像部)

田中ひかる
1970年東京都生まれ。著書に『明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語』(中央公論新社)、『生理用品の社会史』(角川ソフィア文庫)、『月経と犯罪 〝生理〟はどう語られてきたか』(平凡社)、『「毒婦」 和歌山カレー事件20年目の真実』(ビジネス社)など。
深沢潮×田中ひかる「教科書には出てこない、生きた女性の歴史〜朝鮮王族と結婚した皇族・李方子と、明治のナイチンゲール・大関和」
開催日:2023年6月30日(金)
時間:19:00~20:30
商品:アーカイブ視聴(7月21日まで視聴可能)
料金:990円(税込)
視聴方法:PC、スマホ、タブレットなどのブラウザから視聴できます。
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